母乳の質や量と、赤ちゃんに母乳をあげるママは気になることがたくさんあります。
特に母乳の質は、赤ちゃんの成長にも深く関係するものですから、ママ自身、授乳チェックをするなど気を付けている人も多いのではないでしょうか。
しかし、母乳は時期によって種類があり、その種類によって、母乳は成分や味などが変わります。
そして、その母乳の種類は「初乳」「移行乳」「成乳(成熟乳)」の3つがあります。
そこで今回は、
・母乳は時期によって種類が変わるの?
・初乳って何?
・移行乳について知りたい!
といった方に、母乳の時期による量や質の変化や、母乳の種類の中でも特に、「初乳」と「移行乳」について詳しくご紹介します。
常に一定ではない母乳
妊娠中も母乳の分泌はされていますが、活発に分泌が始まるのは産後からです。
また、母乳は搾乳でもしない限りあまり見る機会がないので仕方がないのですが、母乳は常に一定の成分や量ではありません。
母乳の種類は時期によって3つに段階分けすることができます。それが「初乳」「移行乳」「成乳(成熟乳)」であり、左から順に変化していきます。
母乳の質もまったく違い、初乳と成乳を比べてみてもその色合いから違いははっきりとわかるようになっています。
どうして母乳は一定ではないの?
母乳に赤ちゃんに必要な栄養素が含まれているのは、周知の事実です。その栄養素は赤ちゃんの成長に必要不可欠といわれ、一時期は「絶対母乳で育児をするべき」なんて流れもありました。
そんな母乳の質は、一定していて良さそうなものですが、どうして三段階もの種類に分かれてしまうのかというと、赤ちゃんの成長に合わせて、その時々で栄養素の割合や質を変える必要があるからです。
赤ちゃんは一から身体を作っている状態なので、逆に母乳の質を一定にしてしまうと、赤ちゃんの発育に影響が出てしまうことが考えられます。
初乳とは
母乳の最初の段階に出る初乳は、色合いが濃い黄色がかった色で、印象としてはバター、もしくは濃厚なクリーム色をしています。
味も濃厚で、触った感じはドロリとした、粘り気が高いものになっています。
通常の母乳の場合、ドロドロした母乳は質の悪い、まずい母乳とされていますが、初乳に関してはこれが通常で、粘度が高いながら消化によく、ミネラルやたんぱく質、特に赤ちゃんが免疫システムを作るにあたり必要な抗体や、成長因子などが多く含まれています。
また、初乳は赤ちゃんの胎便排泄も促し、これによって消化管から黄疸の原因となるビリルビンを排出することになるので、新生児黄疸も予防することができます。
初乳がドロっとしている理由
色が黄色っぽくて、ドロっとしている母乳はなんだか飲みにくそうな気がします。にもかかわらず、初乳がそんな色合いをしていることやドロっとした粘度を持っているのには、栄養素が関係しています。
母乳には赤ちゃんに必要な栄養素が豊富に含まれていますが、初乳は特にその栄養素の量が多いのです。
初乳の説明でも触れましたが、鉄分などのミネラルやたんぱく質はもちろん、ビタミンも多く含まれています。
特に、β-カロテンは母乳と比較すると約5倍も多く含まれていて、それが初乳を黄色っぽく見せています。
また、水溶性ビタミンやたんぱく質の含有量も多く、これによりドロッとした質感を生み出しています。
初乳にはラクトフェリンも豊富
また、初乳にはラクトフェリンが豊富に含まれています。
ラクトフェリンとは、抗菌・抗ウイルス作用、免疫を調整してくれる作用も持っており、これによって赤ちゃんの免疫力を高め、大腸菌などのさまざまなウイルスから、赤ちゃんを守ってくれます。
初乳だけでなく、通常の母乳にも含まれているものではあるのですが、初乳は約3倍ものラクトフェリンが含まれています。
生まれたばかりの赤ちゃんは免疫もなく病気にかかりやすいですから、免疫力アップもかねて飲ませてあげるようにしましょう。
初乳はどんな味がするの?
質の良い母乳の味は、ほのかに甘みがあるといわれています。この味は母乳の質をチェックする際の基準にもなっており、酸っぱかったり苦かったりすると母乳の質が落ちている証拠です。
赤ちゃんも味にはうるさいので、母乳がまずいと授乳を拒否することさえあるほどです。
赤ちゃんが拒否することなく初乳を飲んでいるところをみると、美味しいものなのかと思いますが、実は、初乳の味はほんの少し塩気があり、甘くはありません。
ただし、これは胎便排出を促すためこのような味になっており、質が落ちているわけでは決してないので安心して下さい。
初乳はいつまで出るの?量はどれくらい?
初乳は読んで字の如し、最初の頃に出る母乳のことです。
その時期は産後すぐから数日の間に出始め、それから産後1週間くらいまで出るとされていますが、時期に関しては個人差があり、明確に時期は決まっていません。
ママによっては、1週間どころか5日で終わってしまう人もいますし、逆に10日と長く続くママもいます。
その量もママによって異なりますが、基本的には大量に出ないのが普通です。授乳をするママの中にはちょびっとしか出ない人もいれば、ほとんど初乳が出ない人もいます。
産後1週間くらいは様子を見よう
とはいえ、初乳には赤ちゃんに必要な栄養素がたくさん詰まっています。そのため、ママの中には、母乳の出が悪くても少しでも飲ませてあげたいと思うママは多くいます。
もし、初乳の出が悪くても、産後1週間くらいは乳首マッサージなどをして、チャレンジを続けるといいとされています。
初乳が出ない原因に、乳管(母乳の通り道)がまだ通っていなかったり、詰まっているだけの可能性も考えられるからです。
また、マッサージだけでなく、赤ちゃんになめてもらったり、吸ってもらうだけでも初乳の出がよくなります。
初乳はママにも良いことが!
初乳に含まれる栄養素からもわかるように、初乳は赤ちゃんに必要不可欠な母乳といえます。
粉ミルクで育児をするママが増加傾向にある現在ですが、それでも母乳育児をすすめる理由も理解できる気がします。
また、初乳は赤ちゃんに良いばかりでなく、ママにもメリットがあります。赤ちゃんに初乳を飲んでもらうことで、母乳が出やすくなり、量も増えるといわれているのです。
母乳は、ママの体調や生活習慣などを原因に急に出なくなってしまうこともあります。それも踏まえると、赤ちゃんにはぜひ初乳を飲んでもらうようにしたいです。
移行乳って何なの?
移行乳は初乳の次の段階の母乳で、初乳から成乳(成熟乳)に変わっていく間に出る母乳のことをいいます。
色合いは初乳の頃に比べ更に濃くなり、白く濁ったクリーム色をしています。
母乳の量が徐々に増えていくのもこの時期で、おっぱいも張りやすく、固くなっていくことから、痛みのあまり辛く感じてしまうママも珍しくありません。
また、初乳の頃より、抗体や成長因子など免疫に関係するものや、たんぱく質が減少してしまいますが、代わりに糖分や脂肪の割合が増えていきます。
移行乳が間にある理由
出産後であれば4日~15日ほど、初乳が終わってから約2週間ほどが、移行乳の時期とされています。
すぐに成乳でもいいところを、どうして間に移行乳が入るのかといえば、赤ちゃんの身体を母乳(成乳)に慣れさせるためというのが理由に挙げられます。
むしろ、ここで移行乳ではなく粉ミルクなどをあげてしまうと、消化が追いつかず赤ちゃんが下痢になりやすくなってしまうという場合があります。
移行乳は、赤ちゃんが摂取したものをきちんと消化できるようにするための大事なプロセスなのです。
どれくらいで成乳に変化するの?
約2週間の移行乳の時期に、母乳は色や質を徐々に変化させていきます。そして、2週間も経つ頃には、その色合いはクリーム色から牛乳のような白色になっていきます。
質感も初乳のようなドロリとした感じから一転、さらさらとした感じになります。
補足しておくと、成乳は飲むタイミングによっても変化が見られます。早いタイミングで確認してみると、脂肪の濃度により色合いは透明がかった白色、後半の母乳は濃い白色に変わっています。
これらの母乳は前乳・後乳と呼ばれていますので頭の片隅に入れておいて下さい。
移行乳時の胸の張りが強い時の対策
移行乳は、初乳の時よりも母乳の量が増えてきて胸が張ってきます。更に、脂肪分や糖分の割合も増えてくるので、例えば、ケーキなど糖質の高い食べ物や、揚げ物など脂っぽいもの、脂肪分が多い物を食べると、乳腺炎になってしまう恐れもあります。
すべてのママが当てはまるわけではありませんが、母乳の質にも影響してきてしまいますので、食事の栄養バランスには気を付けるようにしましょう。
また、胸の張りに関しては赤ちゃんに母乳を飲んでもらうことが一番の対策です。
とはいえ、移行乳は母乳の量が増えるとともに、自然と授乳回数も増えてくるので、そこまで神経質にならなくても大丈夫です。
気を付けたい母乳チェックの時期
ママとしては、赤ちゃんに美味しい母乳を飲ませてあげたいと考える人が多いでしょう。そのためには、日々の体調管理や生活習慣の改善、母乳のチェックも欠かせません。
母乳のチェックは、母乳の色や味に変化がないかどうかを確認するというものですが、頻度としては3日に1度くらいがちょうど良いとされています。
しかし、ここで気を付けて欲しいのが時期で、初乳の時期は栄養素の割合の関係でどうしても色が黄色っぽくなってしまいます。
また、移行乳も成乳に向けて色や質感が徐々に変化していく時期です。
そのため、チェックをするにはとても紛らわしいので、母乳チェックを行う場合には、産後1ヶ月後。成乳になってからにして下さい。
質の悪い母乳の色、味について
初乳、移行乳の時期は授乳チェックをすることはあまりないかもしれませんが、参考までに説明すると、質の悪い母乳は見た目からして違います。
その色合いは黄色の場合もあれば、オレンジ色や黄緑色をしている場合もあります。質感もドロドロとしていて、独特な匂いもあります。
色合いが黄色っぽくて、ドロドロしていると聞くと、初乳のようなイメージを受けますが、味はほのかに塩気がするどころか強い塩気があり、苦みや渋み、酸っぱいこともあり、初乳とは明らかに違います。
そのような特徴に当てはまる場合には速やかに対策を取るようにしましょう。
赤ちゃんが母乳を飲まない場合は?
初乳や移行乳の時期でも、赤ちゃんが授乳拒否をして、あまり母乳を飲まない様子が見られることがあります。
まず疑ってしまうのが、母乳の質ですが、初乳の時期の場合には赤ちゃんも生まれたばかりのため、母乳が上手く飲めないことが理由に挙げられます。
決して、授乳拒否をしているわけではありませんし、むしろおっぱいを口にくわえるだけでも赤ちゃんは安心するといわれています。
そのため、初乳の時期はそこまで不安に思う必要はありませんが、問題は移行乳です。移行乳の場合には、ママが摂取したものなどで母乳の質にも影響が出てきます。
母乳を飲まないだけでなく、明らかに態度が不機嫌であったり乳首を引っ張るなどの行動が見られる場合には質が落ちてしまっているサインかもしれませんので、注意するようにしましょう。
母乳が飲めなくても赤ちゃんは育つ
初乳と移行乳について説明しましたが、母乳は必ず出るというわけではありません。
ママの体調や生活習慣、ストレス、血行不良、授乳間隔の問題など、ほんの些細なことで出にくくなってしまったり、止まってしまうことがあります。
初乳でも触れたように、乳首マッサージをしたり、原因に合った対応をすることでそれらの問題は解消されることもありますが、上手く出せない時も少なくありません。
しかし、だからといって赤ちゃんの成長が遅れてしまうというわけではありません。現在は粉ミルク育児(完ミ)で育てるママも多くなってきていますので、気にしないことが大切です。
不安な時は母乳外来へ
不安に思う必要はないとはいっても、母乳の出が悪かったり、赤ちゃんが母乳を飲まないなど、いざそういう状況になると不安に思わないのが難しいものです。
不安に思ってしまう方が、母乳の出を更に悪くしてしまうこともあるので、できれば1人で悩み過ぎないようにして欲しいところですが、初乳、移行乳の時期での母乳トラブルや気になることがあれば、母乳外来を受診してみましょう。
母乳外来は、助産院や産婦人科で助産師さんが母乳関連のサポートを行ってくれる場所です。
相談を聞いてくれるだけでなく、母乳のケアもしてもらえるので、もしもの場合には1つの選択肢として考えてみて下さいね。