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カンガルーケアの効果と危険性

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カンガルーケア

出産して赤ちゃんがおっぱいをくわえれば、当たり前に母乳育児が簡単に始められると思っている人がいるとしたら、それは大きな勘違いです。

何も考えずにすんなり出産直後から母乳育児が始められるという人もいますが、多くのお母さんはおっぱいが思うように出なかったり、赤ちゃんが上手におっぱいを飲むことが出来なかったりして、母乳育児がイメージ通りにいかないというケースも少なくありません。

そこで、母乳育児の最初のステップとして、カンガルーケアを行う産院も増えてきています。危険性も指摘されることもあるカンガルーケアですが、いったいどんなメリットがあるのでしょうか。また、どのようなことに注意する必要があるのでしょうか。

今回は、カンガルーケアについて詳しくご紹介していきます。

カンガルーケアとは?

もともとは、低体重児のための保育器が足りなかったコロンビアで始まったカンガルーケアですが、出産後すぐに赤ちゃんをママの胸に抱かせて、直接肌を触れ合ったり、話しかけたり、授乳したりすることを言います。その姿がカンガルーの子育ての様子に似ていることから、カンガルーケアと呼ばれています。

日本でも始めは、新生児センターに入院中の赤ちゃんが面会に来たお母さんの裸の胸に抱っこされながら面会して、不安になりがちな新生児とお母さんとの絆を深めるための試みでした。ですが、入院の必要のない健康な赤ちゃんにも出産後すぐにお母さんに抱っこされることで、自然におっぱいを吸うということがメンタル的にも良いとされ、今日本中に広まっています。

カンガルーケアと母乳育児

WTO(世界保健機構)やユニセフ(国連児童基金)では、赤ちゃんに優しい病院を認定していますが、認定施設では「母乳育児を成功させるための10条」と言う取組みがなされています。その中で、

・母親が出産後30分以内に母乳を飲ませられるように援助すること
・母親と赤ちゃんが産院でも同じ部屋で、24時間いつも一緒にいられること

という項目があります。母乳育児を推進するという活動も盛んで、いわゆるカンガルーケアということを実践する産院が増えてきました。2010年の調査によると日本全国の産院の約65パーセントでカンガルーケアが行われています。

出産直後から常に母子が一緒にいて、いつでもおっぱいを飲ませることが出来るということが、母乳育児を成功させるポイントと言われています。

カンガルーケアの効果

カンガルーケアには、他にもどのような効果があるのでしょうか?期待できるとされる効果をまとめました。

・肌に直接抱くことで、親としての自覚が目覚める
・産後の疲れが赤ちゃんを抱くことで癒される
・お母さんの正常細菌が赤ちゃんに移ることで、雑菌に対してバリア効果を得る事が出来る
・生まれたばかりの赤ちゃんが、お母さんの肌に密着することで、一定の体温を保てる
・お母さんのお腹にいた時の様に、安心感を与える事が出来る
・赤ちゃんが安心することで、呼吸が安定する
・母乳の出が促され、お母さんは母乳育児に積極的になれる
・赤ちゃんは抱かれることで安心し、深い眠りにつくことができる

等が挙げられます。お母さんにとっても、赤ちゃんにとってもメリットが沢山あります。

多くの方は出産後思うように母乳が出始めないことから、カンガルーケアはその後の母乳を促すために特に有効な方法と言われています。

生まれてすぐからおっぱいを吸ってもらうことができるカンガルーケアは、世界中の多くの病院で実施されています。

カンガルーケアの流れ

カンガルーケアに向けての準備

出産前からおっぱいの準備は、体の中で着々と進んでいます。エストロゲンやプロエストロゲンといった女性ホルモンの影響で出産が近づいてくると乳頭に向かって次第に血液の循環量が増え、乳腺が発達してきます。妊娠16週を過ぎたあたりから、医師や助産師などに相談して、出産後スムーズに母乳育児に移行できるように準備しましょう。

乳首の形が扁平、陥没や大きすぎたり、小さすぎたりということで赤ちゃんがおっぱいを上手に飲めないということもありますので、妊娠中期にはそのあたりも確認しておきましょう。妊娠後期に入ったら、おっぱいをマッサージしましょう。マッサージは入浴時が一番ベストですが、一日に1~2回、一度に15分くらいを目安に毎日行いましょう。

ただし、お腹が張っている時には早産の危険性がありますので、おっぱいマッサージは中止してください。定期的に専門家のアドバイスをもらいながらカンガルーケアを目指すことが大切です。

初めてのカンガルーケア

カンガルーケアを行うためには、お母さんは元より赤ちゃんの体調も良い場合が前提となります。もちろん産院でカンガルーケアを行う場合には、親として同意する他に、医師の判断が必要です。

新生児は体力も十分ではないため、医師の判断で時間を制限されることもありますし、許可されないこともあります。希望している場合でもまずは、赤ちゃんの体調が第一ですので、実施できるかについては理解が必要です。

医師の許可が出された場合には、お母さんは赤ちゃんと密着する部分の衣服を取り除いて赤ちゃんを待ちます。出産中に髪が乱れた場合には、赤ちゃんに触らないようしっかり結び直しておきましょう。

赤ちゃんは産後の処置が終わり次第、おむつを履かされ、お母さんのもとにやってきます。うつ伏せの状態でお母さんの上に乗せられた赤ちゃんは、すぐにお母さんの乳首を探し始めます。本能のままに、授乳が始まるのです。新生児の体温は不安定な為、産院などではバスタオルやお母さんの衣服を赤ちゃんにかけてくれます。これは、衣服やタオルの心地よい重みにより、赤ちゃんが安心できる効果もあるようです。

抱っこしたり、話しかけたりして、2人にとって大切な初めての時間を過ごしましょう。

カンガルーケアの時間

病院、お母さん、赤ちゃんの状態によって、カンガルーケアの時間はまちまちですが、通常分娩で大きな問題のない場合、約30分から2時間程度行うのが一般的となっています。

自宅でも継続してカンガルーケアを

カンガルーケアは、何も産院ばかりで行うものではありません。継続してカンガルーケアを行うことで、より多くのメリットを得る事が出来ます。特に母乳育児を続けていくための高い効果が期待できますので、母乳が安定し始める産後1か月までは積極的に続けていくと良いでしょう。

また、病院ではお父さんのカンガルーケアが行われていないところも多いですが、自宅では好きなだけ赤ちゃんを抱っこすることができますので、是非お父さんもカンガルーケアに参加してみましょう。

父親としての自覚を高めたり、体温を直に感じることで赤ちゃんへの育児参加も積極的になると言われています。

カンガルーケアの危険性と注意点

カンガルーケアを行うとお母さんのおっぱいが出やすくなりますし、赤ちゃんに対する愛情が湧き、母乳育児に積極的になれるケースが立証されています。この効果を期待して、カンガルーケアを行う医療機関は増えつつあります。しかし、その影で、カンガルーケアによる危険性も問題視され、裁判などに持ち込まれるケースも発生しています。

赤ちゃんが上手く呼吸できないケース

日本では、出産直後にお母さんのおっぱいを飲ませる時、どうしてもお母さんが分娩台の上に仰向けで寝たままの状態で赤ちゃんをうつぶせで抱っこするという形になってしまいます。そのことによって赤ちゃんが上手く呼吸できない状態が続き、酸素不足でぐったりしてしまうと言う問題があります。中には赤ちゃんが死亡したり、助かっても脳に重大な障害が残るという事例があります。

赤ちゃんの体温が下がるケース

また、寒い分娩室では、逆にカンガルーケアの目的である赤ちゃんの体を温めるということが十分にできないケースもあるようです。赤ちゃんは体温が下がって、危ない状態になることもあります。

赤ちゃんが転落するケース

ベッドに寝た状態で赤ちゃんを抱くため、左右両サイドに落下する危険があるのです。病院などでカンガルーケアを行う場合には、きちんと看護婦さんのサポートがある上で行いましょう。また、退院後家に帰ってカンガルーケアを行う場合にも、家の人などサポートしてくれる人がいる時に行うようにしましょう。

病院では、カンガルーケアに入る前に、体温が安定しているか、呼吸は安定しているか等のチェックをしていますが、新生児は生後間もないため、カンガルーケア中も注意が必要となります。生後1~2時間程は、体温や呼吸も不安定な為、お母さんも赤ちゃんの顔色などを確認しながら、カンガルーケアを進めましょう。

出産直後のカンガルーケアについては、リスクも理解した上で、両親の意志で行うかどうか判断することが大切です。

カンガルーケアのガイドラインをしっかり確認しよう

カンガルーケアは、上記のような危険性もあることから、近年では症例再発防止のために各産院等でカンガルーケアのガイドラインが設けられています。妊婦への説明が事前に行われる病院も増えてきており、抱き方についても新生児の頭が左胸にくるように縦抱きにする等、細かい具体的な改善が続けられています。

産院でのカンガルーケアの実績や、ガイドラインについて不明な点があれば、医師や助産師さんから事前にしっかりお話しを聞いたりし、安心して任せられるか判断するようにしましょう。

カンガルーケアに対し体制のしっかりした病院を選ぶことも、カンガルーケアを希望する場合には必要なことと言えるでしょう。

母乳育児は、産後1週間が重要

出産して息つく暇もなく、カンガルーケアでの授乳が始まります。初めておっぱいを我が子に飲んでもらったときの気持ちは本当に感動的なものです。しかし、理想と現実のギャップにほとんどのお母さんは戸惑ってしまいます。産後1週間は、お母さんの疲労も大きく、睡眠が十分に取れないことも多く、母乳育児の正念場でもあります。

・母乳が出ない
・上手く飲んでくれない
・胸が張るので痛い
・げっぷをしてくれない
・飲んだのにすぐにまた欲しがる

等、問題が山積みの時期です。しかし、産後1週間は栄養や免疫の豊富な、赤ちゃんにとって大切な「初乳」が出る期間でもあります。ここを乗り越えなくては、その後の母乳育児を継続することは出来ません。産後1か月程すると、母乳の出る量も安定し、赤ちゃんもスムーズにおっぱいを吸ってくれることから、母乳育児も楽なものへと変わってきます。

ストレスになったり、もうやめたいと思うことも多いと思いますが、病院の医師や看護師のアドバイスをもらいながら、この期間を乗り切りましょう。

おっぱいをあげる側も、もらう側も練習が必要

生まれたての赤ちゃんの中にも上手におっぱいを飲める子と飲めない子という個人差があります。おっぱいがたくさん出て、赤ちゃんが上手にくわえる事が出来、一回の授乳でしっかり量も飲めて、その上スヤスヤよく寝てくれるような理想的な赤ちゃんだとお母さんも安心なのですが、なかなかそのようにはいきません。

上手くいかなくても一日最低10回は赤ちゃんにおっぱいを飲んでもらいましょう。おっぱいも練習です。練習すればお母さんも赤ちゃんも上手にできるようになりますので、母乳の出を良くするためにも積極的に出産直後から授乳を続けましょう。母乳が出ないからとすぐにあきらめてしまわないことが大切です。

赤ちゃんもお母さんも出ない母乳と戦うよりも人工ミルクの方が楽ですので、油断すると一気に人工ミルクに頼りがちになってしまいます。

photo credit: The joey sticking its head out! via photopin (license)


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